蝶は鱗翅目(りんしもく)というグループに属します。
蝶を捕まえると細かい粉が手につきますね、それが鱗粉(りんぷん)と呼ばれるもので、顕微鏡で見ると、きれいな規則正しい瓦屋根のように見えます。水をはじいて、取れてしまうとうまく飛べません。この鱗粉を持つ翅(はね)が生えたものを鱗翅目といいます。
鱗翅目は、世界中で2万種類もあるらしいのですが、その中でも日本国内で見られる蝶は約240種類、蛾は5,500種類を超えるそうです。
もともと蝶は夜行性の蛾が進化したもので、繁殖の為に昼間行動するようになり、環境の変化で美しい姿に変わっていったものという説があります。そういえば英語ではButterfly(蝶)とMoth(蛾)と、日本と同じように分類されていますが、フランスではどちらもPapillonなどヨーロッパでは、はっきりと区分けされていない国もあるようです。
環境などの変化によって進化するのであれば、これからも時代の変化と共に、昔のように区別がなくなってしまうのかもしれませんね。
蛾の中にはニシキツバメガという、世界一美しい蛾がいるのをご存知でしょうか?
昼行性で美しいので、蝶では?と思ってしまいますね。蝶と蛾を見分けるには、まず触覚を見ましょう。蝶の触覚は、先端に向かってマッチ棒のように膨らんでいますが、蛾の触覚は、徐々に細くなり毛で覆われています。また蛾は屋根型に翅(はね)を広げて止まります。
※翅(はね)の字は、昆虫類に使われ、昆虫の飛翔器官を意味しています。一方、鳥類には、羽や翼の字を使うのが一般的なようです。
今回は、蛾の幼虫に擬態している?ルリタテハの幼虫の飼い方や餌についてわかりやすく解説します。
目次
ルリタテハとは?
タテハチョウ科に分類されます。翅を広げると65mmほどの中型の蝶です。
和名のルリタテハ(瑠璃立羽)は、その名の通り翅を広げた時の、紫がかった鮮やかな瑠璃色をしています。また天然石のラピスラズリ(絵画のフェルメールブルーで知られていますね)の色と表現したほうがイメージしやすいかもしれませんね。
英語名では、“Blue Admiral 青い提督”と呼ばれています。風格のある素敵な名前ですね。
また学名のkaniska canase no-japonicumはシーボルトによって付けられたそうです。Kaniskaはインドのクシャン朝の国王canaseはギリシャ神話の風の神の美しい娘no-japonicum“日本語のノ”の意味らしいのです。広げた翅に白っぽい“ノ”の模様があります。
ルリタテハの舞う姿は、風格がありヒラヒラと風に乗って美しく優雅に見えて、捕まえようとすると瞬時に逃げるので、これらの名前に納得ですね。
鮮やかな翅色は、蝶同士のコミュニケーションをとるための識別や、開けた場所では光を反射させて、外敵から身を守るためといわれています。ルリタテハの翅の表は鮮やかですが、腹側の裏は大変地味な茶褐色をしています。樹木や枯れ葉の中で擬態して、姿を隠すためでしょう。
東アジアが原産で、中国・インド・朝鮮半島・マレー諸島の島々の高地にも棲息します。日本国内では北海道から沖縄まで分布しています。主に平地の森林に生息しますが、街の公園や緑地でも見かけることができます。特に暖かいところほど良く発生するようです。
暖かい地では、6月~7月・8月・10月の年2~3回。寒い地では、8月~9月の年1回発生します。タテハチョウの種類は、成虫で越冬するものが多いようです。ルリタテハも成虫の姿で、温度変化の少ない木の洞や岩場の陰、倒木などで、冬を越します。春に翅の傷んだ姿を見かけたら、それはきっと寒い冬をじっと我慢した越冬ルリタテハでしょう。
夏型と冬を越した秋型では、模様が少し違います。
夏型・・・表の瑠璃色が鮮やかで、裏の茶色・黒・白の斑模様がはっきりしている。翅の縁のギザギザが浅い。
秋型・・・表の瑠璃色が薄く、白い帯は色が薄くて幅が広い。裏は黒っぽい。翅の縁の切れ込みが深い。
ルリタテハは、花にはあまり訪れず、クヌギの樹液や落ちた果実などの蜜を吸います。
産卵期になると、幼虫のために、サルトリイバラやホトトギスなどのユリ科の植物を探して飛び回ります。
蝶はそれぞれの幼虫に食草があります。
主な蝶の食草を紹介しましょう。
☆モンシロショウ・・・キャベツ・アブラナ・大根などのアブラナ科
☆モンキチョウ、シジミチョウ・・・クローバーなどのマメ科
☆アゲハチョウ、ナミアゲハ・・・カラタチ・山椒・ミカンなどのミカン科
☆キアゲハ・・・人参・パセリ・セリなどのセリ科
☆アオスジアゲハ・・・タブノキ・ヤブニッケイなどのクスノキ科
☆カラスアゲハ・・・カラスザンショウ
☆ヤマトシジミ・・・カタバミ
☆ヒメアカタテハ・・・ハハコグサ・ヨモギ・ゴボウなどのキク科
※食草とは、ある種が特定の植物を食べる場合、その植物のこと。
植物には、それぞれ産卵刺激物質が出ているようです。母蝶の前脚の先端には、“ふ節”と呼ばれる部分に化学感覚子があって、その植物に含まれる化合物を認識できるのです。
産卵前に葉の表面を前脚でたたいて、化合物を感じ取り産卵します。それぞれの幼虫の食草以外の葉には絶対に産み付けることはありません。
これから産まれてくる幼虫の成長の為に、食草選びの不思議な能力を身につけているのですね。
ルリタテハの幼虫の飼い方 ①必要な環境は?
特別な環境を整える必要はありませんが、薄暗い林や草木の生い茂った場所を好むようです。ルリタテハの幼虫は、移動せず好きな葉をひたすら食べる習性なので、食草のホトトギスなどのユリ科の植物の鉢植えや庭で飼育できます。
家の中での飼育は、昆虫用の水槽などでも飼育できますが、ユリ科の植物の切り花を花瓶などに挿した状態でも飼育は出来るでしょう。常に新鮮な葉のたくさんついた食草を用意しましょう。
また家庭菜園などで使うネットなどで覆うと、他の虫がついたり、天敵に狙われることなどを防げるでしょう。
ルリタテハの幼虫の飼い方 ②飼育方法は?
特に難しい飼育方法はありませんが、食草を十分に与えることが一番です。
また蛹になるときなどは、葉から落下しないように見守りましょう。
ルリタテハの幼虫は、食草から離れることなく、卵から初齢(1齢)~終齢(5齢)まで段階的に脱皮をしながら、成長します。
卵から孵化したばかりの初齢では、2mm~4mm程、茶色に細く黒い棘の姿。
2齢では、薄黄色の斑模様が現れます。
3齢~4齢では体色が黒くなり、棘も太く鋭くなり、黄色の斑模様は濃くなります。
5齢の終齢になると、棘の色が黒から黄白色に、体色もオレンジ色が際立ってきます。鋭い棘の数は68本あり、いかにも毒々しい姿ですが、無毒なのです。
いよいよ幼虫から蛹になる準備の前蛹には、食べるのを止めて茎などに体を逆さまにしてぶら下がります。その後すぐに蛹になります。蛹になる時には今までの棘状突起の服を脱ぎ棄てます。脱ぎ捨てた服はイガグリの殻のように見えます。金色の糸座でしっかり茎についています。
蛹からおよそ2週間位で羽化して蝶になります。
ルリタテハの幼虫の飼い方 ③餌はどんなもの?
サルトリイバラ・ホトトギス・カノコユリ・オニユリ・ヤマユリ・シオデ・オオバタケシマランなどのユリ科の植物の葉を食べます。
葉の端からではなく、真ん中に穴をあけながら食べ尽くします。
ルリタテハの幼虫の様子
ルリタテハの幼虫はどこで手に入る?
ルリタテハの母蝶は、必ずユリ科の植物に卵を産み付けますので、幼虫の大好物の葉の裏側を覗いてください。
小さな直径1mm程の球状で緑色に白い縦縞模様が入った(スイカのイメージ)卵を発見することができます。
ルリタテハの幼虫を飼育する際の注意点は?
ルリタテハの幼虫は、毒を持つイラガの幼虫に擬態しています。
イラガの幼虫は、体に多くのトゲの突起があり、刺すと毒液を出しますので、ほとんど天敵はいないようです。
そんなイラガに擬態しているルリタテハの幼虫も、あまり天敵は来ないようですが、幼虫に寄生する“タテハサムライマユコバチ”という寄生蜂が見られることがあります。寄生すると幼虫のお腹に、細く白い糸で泡のような繭を作ります。その中におよそ200匹もの小さなハチの蛹が潜んでいます。寄生されている間はルリタテハの幼虫は終齢になっても蛹化できません。
このように寄生されてしまうと、育つことができなくなるので、他の虫が寄り付かないように常に成長の様子を観察しましょう。
まとめ
蝶の数え方は知っていますか?
もちろん“匹”でも、決して間違いではありませんが、それ以外に一頭・二頭・三頭・・・・とも数えられます。
“頭(とう)”の由来は様々ですが、元々英語で家畜などの大きな動物を“head”で数えられていました。日本語でも、人数を把握するときに“頭数(あたまかず)”で数えますが、これも同じ発想からでしょう。この数え方は西洋の動物園などでも、飼育している生物すべてに“head”を用いていたようです。そのうち昆虫学者が研究対象としていた蝶の個体も“head”として論文に載せていたため、日本語訳で“頭”になったといわれています。
蝶の幼虫など昆虫を観察していると、頭がとても目立ってみえますね。“頭”の数え方が正しいように思えてきました。
蝶がヒラヒラと舞う姿に、今まではあまり意識していませんでしたが、食草探しに奔走していたことを知ると、思わず頑張ってと声をかけたくなりますね。道端に咲いている草花の葉にも目を向けて、裏をそっと覗いてみましょう。何か発見があるかもしれません。
以上、ルリタテハの幼虫の飼い方や餌についてわかりやすく解説でした。
関連記事:モンシロチョウの幼虫の飼い方や餌についてわかりやすく解説