“蟷螂生ず(かまきりしょうず)”という言葉をご存知でしょうか?

古代中国より、一年を太陽の動きによって二十四の季節に分けた“二十四節気(にじゅうしせっき)”が伝わりました。さらに日本では江戸時代に入り、二十四節気を5日程ずつに分けて、七十二候(しちじゅうにこう)として、日本の風土に合った季節のうつろいを感じさせるような動植物の変化を短文で表現しました。
そのうちの一つ“蟷螂生ず”は、例年6月5日~9日とされ、冬を越したカマキリの卵から、たくさんの子カマキリが一斉に生まれる頃を表しています。

この頃からジメジメした梅雨が始まりますよと告げているのです。

※ちなみに“気候”という言葉は、二十四節気の“気”と七十二候の“候”を組み合わせているそうです。

日本では、カマキリは“拝み虫(おがみむし)”や“斧虫(おのむし)”などと呼ばれています。カマキリの鎌を上げて獲物を捕獲する準備姿勢に由来するものでしょう。

学名は“matodea預言者”を意味していて、英語名も同じように“praying(祈る) mantis(預言者)”ともいわれています。海外でもカマキリにまつわる色々な言い伝えがきっとあるのでしょうね。

日本の北国では、母カマキリは卵が雪に埋もれないように、その冬に降るであろう積雪の高さよりも上に、卵を産み付けるといわれています。その年の積雪量の預言者なのでしょうか? 研究者の間では、不確かなものとされていますが、大昔から地球上に存在していて、琥珀の中のカマキリの化石まで発見されているのですから、学名からしてもどこか神秘的な感じがしますね。

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カマキリの生態は?

カマキリとは、昆虫綱カマキリ目の昆虫の総称です。漢字表記では蟷螂(とうろう)・螳螂・鎌切などと書きます。

体は細長く、6本の脚のうち前脚は鎌状に変化していて、多数の棘があります。前脚のギザギザしている鎌で挟まれると、どんなにもがいても逃れることができないでしょう。

逆三角形の頭部には、大きな眼があり、体も柔らかいので、体を動かさなくても頭だけを柔軟に動かして、獲物の小さな動きにも反応します。
また眼にも秘密があります。

カマキリの眼は、顔の両側にある大きな眼は複眼で、その二つの複眼の間にある小さな3つの眼が単眼です。なんとカマキリは5つの眼を持っているのです。
単眼は、主に明るさを感知する役目です。

複眼とは、小眼(個眼)とよばれる色素細胞が2万個以上集まったものです。これによって昼間は色素細胞が広がり、余分な光を遮ります。夜には色素細胞が表面に集まるので、光をたくさん取り入れることができます。小眼の色素細胞を調節することで、夜でも狩りができるのです。

色素細胞が集まると、眼の表面が黒く、まるでサングラスをかけているように見えます。まさに夜のギャングという感じですね。

カマキリの眼を色々な方向から見ると、必ず黒い点がある事に気が付きます。小眼で360℃どの角度からも見られているということなのです。

ハリガネムシという寄生虫を知っていますか?

カマキリやバッタ・コオロギなどの昆虫に寄生します。カマキリの体内に入り、脳にある種のタンパク質を注入し、水辺へと操作して飛び込ませるそうです。その後ハリガネムシは水中で生活をしながら産卵するという恐ろしい寄生虫です。

寄生されたカマキリは、とても残念ですが、河川に棲む魚たちにとっては、良いエネルギー源となり、生態系を保つ役割にもなっているのですね。

カマキリは何種類くらいいるの?

世界では2,000種類前後、日本国内ではカマキリ科とハナカマキリ科に属する10種類以上いるといわれています。

主な種類の特徴を紹介しましょう。

☆オオカマキリ

体長はオスが70mm~90mm、メスは75mm~95mm

日本最大のカマキリです。

主に朝鮮半島・中国・東南アジア、日本国内では北海道から対馬まで生息します。林などの草むらや樹上で見られます。原っぱなどの開けた場所にはあまりいないようです。

体色は緑色と茶褐色がいます。

チョウセンカマキリやウスバカマキリと似ていますが、オオカマキリのほうが大型です。また後翅の付け根あたりが紫褐色で、前脚の付け根の斑紋は薄い黄色をしています。

☆チョウセンカマキリ

体長はオスが60mm~80mm、メスは70mm~90mm

一般的に国内でカマキリといわれる種類です。

主に朝鮮半島や中国、日本国内では本州から沖縄まで生息し、北海道にはいないようです。

チョウセンカマキリは開けた環境を好むようで、原っぱや河川敷などで見つけられます。

体色はやはり緑色と茶褐色がいます。

オオカマキリより細身です。またオオカマキリの後翅の色より薄い色をしています。前脚の模様はありません。左右の脚の間の胸は山吹色をしています。

☆ウスバカマキリ

体長はオスが50mm~60mm、メスは60mm~65mm

オオカマキリやチョウセンカマキリと似ていますが、小型でどことなく美しい姿をしています。

ヨーロッパなどでは一般的なカマキリといわれています。“ファーブル昆虫記” (和名では“拝み虫”)に登場するのもウスバカマキリです。

ユーラシア大陸に広く分布します。北海道から南西諸島まで生息しますが、個体数が少ない品種。河川敷や草原で見られます。

淡い緑色または薄褐色です。前翅はやや透けた感じ、後翅は透明です。複眼の後方に黄色い横線が入り、前脚の内側には黒い楕円の紋があります。

卵鞘(らんしょう)は細長く枕状の特徴があります。

☆ヒナカマキリ

体長はオスが15mm~18mm、メスは18mm~20mm

日本最小のカマキリです。

台湾や日本の本州より南に生息します。雑木林やマツ林の下草などで見られます。

目立たない茶褐色の体色で、他のカマキリのように緑色はいません。

発見の多くはメスで、翅は退化しているようです。オスの小さい翅は小さな鱗状をしています。他のカマキリとは違い、トゲの突起が付いた卵鞘(らんしょう)を樹皮の中に産み付けます。

☆ヒメカマキリ

体長はオスが25mm~33mm、メスは25mm~35mm

本州から南西諸島に分布します。

コカマキリより小さく俊敏です。樹上にいることが多く、追いつめられると、他のカマキリにはない擬死行動をします。艶のある翅には茶褐色で濃い褐色の斜め縞模様があります。

ハナカマキリ科の仲間には、海外では花そっくりに擬態する種類が多くいます。

カマキリは熱帯や亜熱帯地方に種類が多いのですが、未だ解明されていない種類も多く、研究者の間でも4,000種類位いるのではないかともいわれているようです。

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カマキリは脱皮する?

カマキリ 飼育



秋が深まるころ、母カマキリは産む場所をさがします。そしてススキなど植物の茎や葉などに2時間位かけて卵鞘(らんしょう)を産み付けます。

卵と同時に分泌される粘液をかき混ぜた白い泡の卵鞘には、200個もの卵が並んでいます。

泡は茶色く固まり、外からの衝撃や温度湿度の変化から卵を守り、寒い冬を越すのです。

卵鞘は、カマキリの種類によって形が違うので、調べるときの手掛かりにもなります。

カマキリは、卵→幼虫→成虫と、蛹(さなぎ)の時代を通らずに、脱皮を7~8回繰り返して成長します。1齢幼虫からほとんど成虫と同じ体のつくりで、最後の脱皮で翅が生えるだけです。このことを不完全変態と言います。

不完全変態の昆虫は他に、トビムシ・コオロギ・バッタ・シロアリ・ゴキブリ・カメムシ・セミ・トンボなどがいます。

完全変態は、カブトムシ・チョウ・ハチなどで、卵→幼虫→蛹→成虫と成長し、蛹から全く違う形になります。

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カマキリの食べ物は?

カマキリは、自分より小さい昆虫や小動物を食べる肉食性です。

動いているものを認識しますので、生きているスズメバチ・キリギリス・ショウジョウバエ・バッタ・オニヤンマ・ヘビ・カエル・トカゲなどをたべます。飼育下では生きた昆虫などが無い場合は、割りばしなどでつまんで、揺らすと食べてくれるようです。

獲物を捕まえるときは、まず中脚を後脚で支えて、左右の前脚を胸部で折り畳み、狙う体勢をとります。体を左右に動かして、獲物との距離を測ります。前脚の鎌を構えてから振り下ろし、捕らえるまでのスピードは、0.005秒といわれています。これを人間に置き換えると、その腕力は3トンにも及ぶそうです。

食後には、ちゃんと前脚の鎌を舐めてきれいに研ぎます。次の獲物の準備ですね。

カマキリは共食いするってホント?

カマキリの共食いは宿命かもしれません。
最初に訪れるのは、卵鞘から孵化して最後の脱皮と共に外へ出たばかりの時に、天敵に食べられたりもしますが、同じ仲間同士での共食いもあります。せっかく生まれたばかりの小さな200匹の命のうち、生き残るのは数匹だそうです。

そしてその危険は、一生のうちに度々やってきます。

秋に獲物が少ない時や、オスがメスに不用意に近づくと交尾前に食べられてしまったりします。オスがメスに食べられるという悲しい犠牲は、その栄養で多くの子供が生まれるので、強い子孫を残すための自然の摂理かもしれませんね。

まとめ

カマキリ 飼育



中国の韓詩外伝に“蟷螂の斧(とうろうのおの)という故事があります。

斉国の君主が馬車で通りかけた道の真ん中に、鎌を上げて向かって来ようとした一匹のカ
マキリの姿を見つけました。すると君主は馬車の向きを変えて、カマキリに道を譲りました。自分の力量も顧みず、前へ進むことしか知らないカマキリがどんな相手にも立ち向かう勇敢な姿は、人間だったら天下を取っていただろうと語ったと書かれています。

この故事が日本に伝わり、戦国時代・江戸時代には、勇気ある虫として兜にカマキリをつけた武将もありました。

京都祇園祭では、南北朝時代に足利軍と勇敢に戦った四条隆資(しじょうたかやす)の武勇ぶりを蟷螂にたとえて、カマキリの立ち姿が乗っている蟷螂山(とうろうやま)という山鉾が今でも繰り出されています。

カマキリは生まれながらにして、単独で行動をして、自分より大きなものにまで、向かっていくように、生き抜き子孫を残すことへの信念のようなものを感じます。まさに孤高の昆虫ですね。

以上、カマキリの生態や種類・食べ物について解説でした。

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