金魚のルーツは、2千年も昔にさかのぼります。中国の長江流域で、銀色のフナの群れから一匹の突然変異の赤い魚を発見することから始まります。
宮廷に献上された赤いフナは、貴族の間で愛され、長い年月をかけて進化を遂げ、尾は二つに分かれ、華やかな姿の魚になりました。中国ではこの金魚を“チュイ”と呼び、中国語のお金が余る“金余(チュイ)”の発音から、金運が上昇する縁起の良い魚として珍重されたといわれています。
人々は“上見(うわみ)”と呼び、金魚を上から眺めていました。金魚は上から眺めると、ゆらゆらと揺れる尾びれや線対称のフォルムがとても美しいですよね。中国でも金魚の誕生以来この“上見(うわみ)”にふさわしい形に次々と改良されたようです。
目次
出目金に関して
出目金も上から見た時の美しさと、飛び出た目が中国の龍をイメージすることから“龍晴(りゅうせい)”とよばれ、大切にされました。
また出目金の仲間で頂点眼という金魚は、目を上から見たいと考え何代にもわたり、小さな穴の開いたカメの中で育てられ、まっすぐ天を仰ぐような特徴的な目になったと言われています。
日本に伝わったのは、室町時代中期、大阪の堺に伝来した説が有力のようです。安藤喜之(あんどうよしゆき)によって江戸時代に書かれた、日本最古の金魚飼育手引書の“金魚養玩草(きんぎょそだてぐさ)”に記されています。当時は長崎や大阪の大名などが飼育していたといわれます。
江戸後期には、浮世絵や川柳などでも金魚が取り上げられ、庶民の間にも金魚ブームがやってきました。養殖技術も発達し、金魚の入ったタライを天秤棒に下げて売り歩く、金魚売りの声は江戸の夏の風物詩となりました。
中国にはまだ日本に来ていない品種もたくさんいるようですが、日本にいる主な金魚を紹介しましょう。
☆中国より伝来した金魚
ランチュウ・ワキン・リュウキン・オランダシシガシラ・デメキン・チョウテンガン
☆日本で出現した品種
◎原形から分離したもの
ジキン・ナンキン・トサキン
◎交雑して固定したもの
シュブンキン・キャリコ・アズマニシキ(人気ゲームのポケモンのアズマオウですね)
◎輸入の品種
スイホウガン・ハナフサ・パールスケール・タンチョウ・セイブンギョ
◎新しく命名された雑種
エドニシキ・ハマニシキ
◎アメリカから戻り繁殖したもの
コメット
金魚発祥の中国では、多くの人々を楽しませるために、200種類以上の変わった金魚を次々と生み出してきたようです。一方新しい品種を生み出す事より美を極めていく日本では、わずか25種類程の品種しかいません。
今回は、出目金の飼育方法・寿命・値段について解説したいと思います。
出目金を飼いたい!
出目金に初めて出会ったのは、縁日の“金魚すくい”という人が多いことでしょう。
子供の頃に黒い出目金しか、すくえなくてがっかりした記憶はありませんか?
鑑賞用に作り出された出目金は目が悪いために、あまり泳ぎも得意ではないので、“金魚すくい”ではすぐに捕まえられてしまうわけなのです。
先日北海道での心温まる出来事がありました。
飼い主さんの話によると、縁日ですくった2匹の金魚、一匹は黒い出目金の“デメチャン”もう一匹は赤い和金?の“リボンチャン”と名付けて大切に育てていました。5か月ほど経って、デメチャンの様子がおかしく水槽の底に横たわったり、うまく泳げなくなりました。水面の餌を食べに行くことも難しくなったデメチャンの様子を見て、リボンチャンは餌を口に含んでデメチャンのそばに吹きかける行動に…それでも食べることができないデメチャンのお尻を今度は自分の背中で押上げて、水面まで運ぶのです。
まるで介護金魚と海外でも話題になったそうです。
一般的に出目金は目を傷つけられることを恐れて、別の種類の金魚と一緒に飼育しないほうが良いとされています。もちろん今回の行動も研究者さんの間では、いろいろな意見がありましたが、心優しい金魚たちの行動にみんな心を打たれました。
たとえ小さな金魚にもそれぞれ心があり、学習する力もあります。研究結果では計り知れない能力を発見する事もできると思います。
上見(うわみ)の金魚を代表する出目金の優雅な泳ぎを眺めながら、一緒に生活してみましょう。きっと何か得るものがあるかもしれません。
出目金の飼育に必要なものは?
☆水槽
水中の酸素を吸って生きているので、狭い水槽にたくさんの金魚を入れると酸素不足になり、水面でパクパクと“鼻上げ”を起こして窒息してしまいます。
大きさは、30cmの水槽では、大型の金魚で3匹・中型で5匹・小型で6匹60cmの水槽では、大型の金魚で5匹、中型の金魚8匹、小型の金魚10匹を目安にしましょう。
また外部フィルターなどを使い水流の調節を行いましょう。
☆底砂
砂利のバクテリアで水質悪化を防ぐことができます。2cm程の厚さに敷きましょう。金魚の砂にはいろいろありますが、カラフルな天然石の“ゴキサンド”は、水質の管理はもちろんの事、水槽の見栄えも綺麗です。園芸用の砂は、有害な寄生虫やバクテリアがいる場合がありますので、避けてください。
☆水草
見た目と光合成によって水中へ酸素を供給します。お腹がすいた時につまんだり、水草の陰で休んだりもします。カボンバ・アナカリス・マルチリングなどがあります。
☆ろ過装置
水をきれいにして、酸素を供給します。
☆餌
天然飼料ではミジンコ・アカムシなどがあります。人工飼料より食いつきも良く、体色がきれいになるようです。人工飼料は固形のペレットや顆粒状のものがあります。人工飼料のほうが手間はかからないようです。
出目金の飼育方法は?
出目金の飼い始めは、輸送や環境の変化でとても疲れていますので、直ぐに餌はあたえないようにしましょう。
3日ほど経ち落ち着いてから少しづつ、5分ほどで食べきれる程度の分量をあげます。残った餌は腐敗や水質の悪化につながるので、取り除くようにします。乾燥ミジンコなどの浮く餌のほうが良いでしょう。
慣れてくれば一日2~3回で、10分程度で食べきれる量にしましょう。
水替えは、水槽の1/3程度の水を、夏場は月2回、冬場は月1回のペースで取り替えます。
水道水の場合は、日の当たるところで1~2日汲み置きしますが、ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)を10ℓの水道水に対して1~2粒入れてカルキ抜きをする方法もあります。
水が緑色になるのは、自然の現象です。植物性プランクトンのアオコという藻が発生しています。魚にとっては悪いものではないのですが、濃くなると鑑賞しにくく、増え過ぎても弊害を及ぼします。
水質が悪化することで、起こる病気がありますので、ろ過装置を使うなど工夫をして、水質をきれいに保ち、出目金の住みよい環境を作りましょう。
出目金の平均的な値段は?
出目金には黒だけでなく、赤・更紗(さらさ・赤が多いと赤更紗・白が多いと白更紗)・三色のキャリコなど交配により、新しい品種が増え続けています。
一般的な種類の出目金は、淡水魚を扱っているペットショップやホームセンターなどで購入できます。
値段はやはり種類によって異なります。流通量の多い黒出目金は安価で200円前後ですが、特殊な模様の出目金は3,000円位でしょう。
出目金の平均的な寿命は?
平均的には5年から10年といわれます。
日常の管理不足が原因で命を落とすことがほとんどですので、水質管理に気を付ければ10年以上生きている出目金もいます。
出目金の飼育の様子
出目金を飼育する際の注意点は?
視力が弱いので、泳ぎも上手ではありませんので、水槽の中の障害物はなるべくないようにしましょう。水槽にたくさんの金魚を入れると、接触で傷が付いたり、目をつつかれたりします。水を変えるときも追いかけまわさず、慎重に取り替えてください。体に傷がつくことも病気の発症原因の一つです。
良くかかりそうな病気と治療法を紹介しましょう。
☆白点病
ヒゼン病ともいわれ、最もよくかかる病気です。稚魚によく見られます。
原因は寄生虫です。梅雨時の急激な水温の変化などをきっかけに発症します。伝染力が強く、体全体に白色斑点が現れ、悪化すると表皮がはがれて命を落とします。
症状が出た時は、完治までメチレンブルー5%の水溶液で薬浴させます。白点が消えた後も一週間ほど続けたほうが良いでしょう。
☆尾ぐされ病
水槽内の細菌カラムナリス菌が原因です。
かかると元気がなくなり、ヒレの先端から白くなったり、充血してきます。進行すると全身に広がり、ボロボロの状態になり命を落とします。
この菌がいても必ず発症するわけではありません。水温の急激な変化や水質の悪化、体に傷がついているときなどに発症しますので、過密飼育をしないようにしましょう。
治療法は隔離後、塩浴や薬浴をします。口くされ病や鰓(えら)ぐされ病になる事もあります。
☆松かさ病
立鱗病ともいわれ、良く発生します。鱗の裏に水疱が生じ、鱗が逆立ちます。悪化すると鱗に血が滲みます。早く隔離して塩浴が良いでしょう。
☆白雲病
松かさ病に似ています。梅雨時に多く発症します。初期は表皮に白雲のような斑点が現れます。全身に広がっていくので、速く隔離しましょう。治療法は白点病と同じです。
これらは主な病気ですが、水温や水質の変化で発症することがほとんどです。水替えの時に注意を払うようにしましょう。
まとめ
日本の金魚養殖三大生産地をご存知でしょうか?
奈良県大和郡山市、愛知県弥富地方、東京の江戸川下流域です。
大和郡山市は、江戸時代に甲斐の国から国替えになった柳澤吉里が持ち込み、水質の良さとため池など養殖に適した土地であったことから、武士が中心となり代々受け継がれていきました。
弥富地方は、大和郡山から名古屋へ移動中に休んだ場所が、弥冨と言われています。弥冨には日本国内の金魚の25種類程がすべてそろっています。また1994年宇宙飛行士の向井千秋さんがスペースシャトルコロンビア号で、弥冨の金魚を宇宙まで連れて行ったことで有名です。
江戸川下流域は、水質と広がりのある土地が、金魚の養殖に適していたようです。江戸川区船堀は現在では少なくなりましたが金魚の養魚場があり、金魚の海外輸出も行われています。船堀駅の壁に描かれた大きな金魚のタイル絵が、金魚の町を物語っています。春は日本観賞魚フェアや夏には金魚祭りが開催され、品評会、即売会など展示が行われているようです。
是非これらの養殖場へ出かけてみてはいかがでしょうか。
お気に入りの出目金と出会えるかもしれません。
以上、出目金の飼育方法・寿命・値段について解説でした。
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