ヘッジホッグは、その可愛さから海外でも色々なキャラクターとして描かれ、人気者ですね。日本で思い浮かぶのは、ゲームのキャラクターでおなじみの青いハリネズミとして擬人化された“ソニック ザ ヘッジホッグ”でしょうか。サッカークラブやF1のマスコットとしても登場しています。丸くなって速く走るイメージでしょうか?
イギリスで名付けられた“pigmy hedge hog”という英語名の由来は、pigmy(小さな)+hedge(垣根)+hog(ブタ)で“垣根の下に生息している可愛らしいブタ”だそうです。
一方、日本では“ヨツユビハリネズミ”という和名で呼ばれています。名前の通り、他のハリネズミの後肢の指は5本ですが、ピグミーヘッジホッグの後肢の指は4本しかありません。
日本ではほとんどの動植物に、見たままの姿形を名前にしているようです。
分類学上では、この“ハリネズミ”は、“ネズミ”ではなく、“モグラ”の仲間です。
齧歯目のネズミやリスなどは、上下二対の強い前歯を持ち、堅い木の実などをかじることで、伸び続ける歯を削ることができます。一方、ハリネズミは、30本以上の細かい歯があり、モグラと同じ食虫目なので、昆虫などの柔らかいものを食べ、歯も伸び続けることもありません。
では“ハリモグラ”はどうでしょうか?
ハリモグラも“モグラ”ではなく、“カモノハシ”目です。
ハリネズミより太くて固い針を持ち、鋭い爪で穴を掘って生活しますが、カモノハシの仲間なのです。決定的な違いは、カモノハシと同じで、卵を産む原始的な哺乳類だそうです。
生物の名前だけにとらわれず、それぞれの生態をよく知る事が大切ですね。
ハリネズミにはピグミーヘッジホッグの他に
◎ヨーロッパでペットとして一般的なヨーロッパハリネズミ(別名ナミハリネズミ)
◎主にアジアに生息するアムールハリネズミ(別名マンシュウハリネズミ)
◎体は小さく耳が大きい、エジプトや中央アジアを中心に生息するオオミミハリネズミ
など海外ではペットとして人気のハリネズミがいますが、日本ではピグミーヘッジホッグのみが飼育や繁殖が許可されていて、他のハリネズミは“特定外来生物”に指定されています。
理由としては、ピグミーヘッジホッグは寒さに弱いため冬眠しませんが、他のハリネズミは寒さに強く冬眠ができます。日本の冬を越すことができるため、繁殖し増えることを懸念しているのかもしれませんね。
※特定外来生物とは、生態系・人の生命・農林水産業などに被害を及ぼすおそれのある外来生物として規制、防除の対象となるものを指定した日本の法律で、2005年6月1日に施行されました。ハリネズミ属は指定第二次指定種として2006年2月1日に施行されています。
今回は、ピグミーヘッジホッグの寿命・飼育方法・販売価格について解説します。
目次
ピグミーヘッジホッグはどんな生き物?
ピグミーヘッジホッグは食虫目、ハリネズミ科、ハリネズミ亜科、アフリカハリネズミ属の哺乳類です。アフリカ(セネガル~ザンベジ)のサバンナ地帯に生息しています。
地面に掘った巣穴でほとんど単独で暮らします。夜行性なので、暗くなってから地面を歩きながら虫などを採食します。
オス、メス共に体型は同じで体長14cm~21cm、体重500g前後、尾長11cm~19cm。
繁殖年齢はオスが6~8か月、メスは2~6ヶ月です。妊娠期間は平均25日間位で、一回の出産に3~4匹の子供を産みます。
世界中で昔からペットとして愛されていますが、日本でも最近人気が出てきました。それは姿形がかわいいだけでなく、鳴き声もなく、毛も抜けない、臭いが無い、狭い場所で飼育できるなど利点が多く、日本の住環境に合っているからでしょう。
およそ5,000本あるピグミーヘッジホッグの針は、実は針ではなく体毛がまとまって、硬くなったものだそうです。お腹は丸くなると守られるため、固い針の背中からお腹にかけては徐々に柔らかい毛になっています。
ピグミーヘッジホッグは、身の危険を感じると、あくまでも身を守るために、針を立てて、体を丸くします。自分の体から針が抜けることも滅多にありません。
では同じように針を持つ“ヤマアラシ”(ネズミと同じ齧歯目)はどうでしょうか?
ヤマアラシは、相手を威嚇して攻撃するために太く硬い針を立てます。相手に刺さると自分の体から抜け、長靴も貫通するほどの威力がありとても危険です。
防御のピグミーヘッジホッグ、攻撃のヤマアラシということですね。
ピグミーヘッジホッグは、決して攻撃的ではなく、優しく飼育すると、とてもよく馴れてくれます。
ピグミーヘッジホッグの針の帯状の色を“バンド”と呼び、その微妙な色合いにより、様々な種類がいます。主な種類を紹介しましょう。
☆スタンダードと呼ばれるソルト&ペッパー・・・塩コショウのような色合いのバンドです。
☆アルビノ種・・・色素が全体に薄く、ピンク色の鼻に赤い目をしています。病気になりやすいので、健康管理に注意しましょう。
☆シナモン種・・・皮膚がピンク色で、鼻は黒い。明るいシナモンブラウンのバンド。
☆ホワイト種・・・全体がオフホワイト、黒い目をしています。病気になりやすい。
☆シニコット種・・・シナモンより薄いバンド。目は赤い。
☆アプリコット種・・・シルコットより薄いバンド。ピンク色の皮膚で、目は赤い。
☆ブラウン種・・・明るいブラウンのバンド。鼻回りが黒っぽい。
☆シルバーチャコール種・・・グレーと白のバンド。
☆プラチナ種・・・耳や手足が黒い。
などの他にもたくさんの種類があります。色の組み合わせで、これからもっと多くの種類が出現することでしょう。色々な子を見ることも楽しみの一つですね。
ピグミーヘッジホッグの飼育に必要なものは?
☆ケージ
夜行性で、夜になると歩き回るので、なるべく床面積の広いものが良いでしょう。水槽を使う場合は、湿気がこもらないように金網などの天井をつけましょう。
☆巣箱などの隠れ家
木製の巣箱の場合は、掃除のしやすい広いものが良いでしょう。布の寝袋や植木鉢を利用したシェルターなども隠れ家として最適です。排泄物で汚れることがありますので、こまめに掃除をして、常に清潔を心がけましょう。
☆床材
木材のチップやペットシーツ。
吸水性の高い針葉樹のチップはアレルギーを起こす子もいますので、出来れば広葉樹を選びましょう。排便の状態で、健康状態をチェックできるペットシーツは、下に潜り込まないように注意が必要です。
☆餌入れ・水入れ
ひっくり返らないように、ある程度の重量のある陶器製の物などを選びましょう。水入れは、排泄物などで汚れることがあるので、給水ボトルをケージに付けるほうが清潔を保てます。常に新鮮な水を用意してあげましょう。
☆回し車(ホイール)
運動不足解消のため、大きめのホイールがいいでしょう。夜行性のため、人のいない間でも遊ぶことができます。
☆保温器具
冬場は、ペット用のパネルヒーターや保温球を使用しましょう。
ピグミーヘッジホッグの飼育方法は?
夜行性なので、昼間はゆっくり休めるような環境を作りましょう。
最適な環境温度は25℃~27℃、湿度は40%~70%を保ちましょう。
夏場は30℃以下になるように、エアコンなどで調節します。冬場は20℃以上になるように、保温器具を必ず使用します。ケージを毛布などで覆ってあげてもいいでしょう。
他のハリネズミは冬眠の習性があるので、冬眠前に食べ物を蓄えることができますが、ピグミーヘッジホッグは、寒さに弱く冬眠しません。12℃以下になると、冬眠状態になりますが食事ができないので、命を落としてしまいます。
食事については、野生下では地面や地中で、ミミズ・バッタ・コオロギなどの昆虫類や小さなトカゲ・カエルなどの両生類、さらに鳥のヒナなどを捕食しています。
飼育の場合は、主食として、良質で添加物のないハリネズミ用のフードや栄養のあるタンパク質ゼリーをペットショップや専門店で購入できますので与えましょう。また補助食としてミルワームやコオロギなどもおすすめです。体調不良の時などには、高栄養の冷凍ピンクマウスがいいようです。
果物や野菜は腸閉塞を起こす危険がありますので、与えないようにしましょう。また固い食べ物もあげないでください。
ピグミーヘッジホッグの平均的な販売価格・寿命は?
種類によっても価格は違いますが、平均的には12,000円~20,000円位です。人気の希少種は40,000円位する子もいるようです。
平均で6年~8年といわれています。環境を整えて、上手に飼育すると10年以上一緒に居られる子もいます。
ピグミーヘッジホッグの食事シーン
ピグミーヘッジホッグを飼育する際の注意点は?
夜行性のため、昼間はおとなしいのですが、暗くなりはじめてから餌を探すために、何キロも移動するなど意外と運動量の多い動物です。運動量が少ない飼育下では、肥満に気を付けましょう。
また温度や湿度には敏感に作用されます。動かなくなる、食べなくなるなど変化が見られたときは、ハリネズミを診てくださる動物病院へ相談しましょう。
まとめ
最近、世界で初めて日本に“ピグミーヘッジホッグのカフェ”が登場しました。
とてもかわいいので、つい手に乗せて、遊んでみたくなりますね。けれど、昼間の過度なスキンシップは、夜行性のピグミーヘッジホッグにとっては、とてもストレスになります。できればそっと観察する程度にしてあげて欲しいと思います。
手の上に乗せるだけでなく、ピグミーヘッジホッグの生活リズムに合わせて、体調を常に観察し、ケージ内を清潔にするなど十分にお世話をすることも、少し距離をおいたスキンシップと言えるでしょう。これも少しでも長く一緒に居られる秘訣かもしれませんね。
以上、ピグミーヘッジホッグの寿命・飼育方法・販売価格について解説でした。
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